..クリックインカムのシステム登場に伴ういくつかのトラブルの本質は一体どういうところにあるのだろうか? アンケート結果をもとに、その本質を分析、快適Net.comの見解を以下にまとめてみました。皆さんのご意見・ご感想もお待ちしています。info@kaiteki-net.comまで。.



読者無視の姿勢が一番問題


クリックインカムのシステムが登場して以来、いくつかのトラブルが発生しています。トラブルの詳細は、メールマガジン専門検索エンジンの「Yomimono Search」さんのメルマガ交流ボード(http://www.yomimono.com/bbs1/bbs.cgi)で詳しく議論されているが、問題の本質はどこにあるのか? また、問題を複雑にしている周辺事情は何なのかを探ってみたい。

まずは、アンケートで得た次の3つの意見を読んでいただきたい。


「...。システムは画期的だと思いますが、広告より本文の方が短い様なメルマガでは、お金だけが目的で発行していると しか思えません。そのためにまぐまぐを利用しているのは許せないと思 いました。(私は意地でもクリックしませんでしたが・・・) まあ、以前からウィークリーまぐまぐの宣伝効果のみを利用してメルマ ガをほとんど発行せずにホームページの宣伝にしかなってないものもあ りましたが・・・。 今回の件では自分のアドレスがまぐまぐ以外の所に勝手に流用されたの が一番の問題だと思います。これでは、安心してメルマガを購読するの が難しくなってしまいます。要は信用の問題でしょうか。...」

「...。発行者が勝手に配信システムを変更するのはとてもまずいことだ。なかには、まぐまぐで読者を集めておきながら、一度も発行しないで移行してしまった発行者もいると聞く。本当かどうかは確かではないが、もし本当なら許せない。...」

「メールマガジン発行者参への信頼が一気に失せてしまいました。 この一件のために、今後は、『発行者が購読者アドレスをダイレクトメール業者に販売しているのではないか」といった疑惑を持つようなケースが増えてくると思います。くれぐれも、無告知で他人の登録メールアドレスを移動するような真似だけは、慎んで頂きたいものです。」


これらの意見を読んでも分るように、読者を不安にさせている根底に、メールアドレスが不正利用されるのではないかという危惧の念があります。


これまでにも、まぐまぐで集めたメールアドレスを名簿屋と言われる人たちに幾つかのメルマガ発行者が売っていた事件が発生している。また、一度もメールマガジンを発行せずに、人気が集まりそうなタイトルと説明文でメールアドレスを集め、それを名簿屋に売っている人たちもいるという噂もある(あくまでも噂で、私は具体的な事例を知りませんが……)。そのようなことが、いらぬ不安を引き起こしているのだ。



● 知名度の問題?

私もこのような背景で問題が複雑化していることは分っていたので、アンケートに、「要するにクリックインカムの運営母体の知名度が人々の不安の原因であり、もし仮に、これで、NiftyのMacky!が同様な広告挿入型のメルマガ配送システムとして登場して、まぐまぐで発行しているメルマガ制作者が同様にMacky!に購読者アドレスを全部移動させたとしても、それほど問題にならなかったと思う」という項目を加えました。(クリックインカムの運営母体である「オン・ザ・エッジ」なる会社はほとんどの人は実際のところ知らないと思います。本当はインターネット雑誌で盛んに取り上げられている、知る人ぞ知る会社なのですが……)


また、過去の事例として、現在、まぐまぐで発行されているメールマガジンの中でダントツに購読者が多いMSNニュース&ジャーナルも、独自の配信システムから「まぐまぐ」へと移行しましたが、その時は若干の苦情が発行者に届いたものの、今ほどの問題になっていません。また、インターネットマガジンの代表格とも言うべき「Field Gate Internet Now!」も独自配信からまぐまぐに移行しましたが、そんなにトラブルになったとは聞いていません。(もちろん、「独自配信=当然、購読者のメールアドレスを知りうる立場にもともとあった=」から、「まぐまぐ」の移転であったことも、問題を大きくしなかった要因ですが、このことは後で論じます。)


さらに、「まぐまぐ」だって、スタートしたての頃は、「私は『A』というメールマガジンを登録しただけなのに、なぜか『Weekly Mag2』も送られてきたというような苦情が相次いで届いたと聞いています。しかし、まぐまぐが有名になるにつれ、そんな苦情を申し立てる人はほとんどいなくなったでしょう。それと同じで、クリックインカムのシステムも認知度が高くなってくれば、問題は解決するのかもしれません。そこで、この「知名度の問題」という項目をアンケートに加えました。


しかし、結果は全くNoと出ました。「知名度の問題」という項目を選択したのは、たったの15人で全体の5.4%でした。また、「メールアドレスの管理を運営会社がきちんとすれば問題はない」という項目を選んだのも、65人(23.2%)で、4人に1人でした。クリックインカムの運営母体がどのような団体かあまり知られていないということも、問題を複雑にしている周辺要因の一つであることは否定できませんが、本質は違うところにあるようです。



● メールアドレスは発行者のものなのか?

その本質は、やはりアンケート結果から分析するのが一番でしょう。「解除方法を明記しないメルマガは許せない」が49.6%とトップだったのは当たり前だとして、「クリックインカムで発行するなら、最初から購読者を募り直すべき」とした人が半数近い46.8%もいたのです。


つまり、アンケートの回答者の何人かもメッセージ欄に書いてくれたように、「メールマガジンの内容に興味を持ったということも条件の一つであるが、何よりもまぐまぐを信頼して登録したのである。発行者一人ひとりに自分のメールアドレスを預けたのではない」という意識が強いのである。だから、クリックインカムで発行するなら契約違反なんだから、最初から、購読者を募り直しなさいという訳である。


この点、先述の「MSNニュース&ジャーナル」にしても「Field Gate Internet Now!」にしても、自分達が自分達のブランド名で集めたメールアドレスだから、読者は少なくとも彼らを信用してメールアドレスを委託したのだから、全く問題ないのである。唯一問題があるとするなら、「まぐまぐ」が無名であった場合だが、この心配もなかった。


それに対して、問題を起こしているメルマガ発行者は勘違いをしていたのである。自分の書いた記事を読んでくれる読者なのだから、その配送システムをまぐまぐからクリックインカムのシステムへ移行して何の問題があるかと。別にメールマガジンの発行目的以外に使うのではない。名簿屋に売る訳でもない。卑近な例ですが、お店が商品の配送をクロネコヤマトからカンガルー便に変えるのにどうして消費者に断らないといけないかと思ってしまった訳です。「顧客のリストは自分で集めたのだと。まぐまぐの力で集められた部分もあるけど、それはお互いが共存関係にあったからで、自分達が集めたメールアドレスをWeekly Mag2の購読者にしてあげているのだから、まぐまぐも有り難く思え」と、ここまで乱暴な言い方でなくても、心のどこかにそういう思いを持っていたりするのだと思う。


実際のところ、法的なメールアドレスの所有権はどちら(まぐまぐであるのか発行者であるのか)にあるのかと言われると私には分りませんが、一つ言えるのは、当たり前ですが、読者のメールアドレスということである。だから、メルマガ発行者は、メールアドレスの持ち主である読者に当然、お伺いを立てるべきなのである。さらに、読者にその判断基準となるもの、具体的には、クリックインカムの運営母体「オンザエッジ」がどういう会社で、どんな経歴の会社でとか、信頼がおけるところであるとか説明しなければいけません。でも、私が知る限りでは、周知期間を置いてくれているメルマガでもも、このことに触れているメルマガは皆無でした。周知期間さえ置けば、何の問題もないかのようなふるまいです。「オン・ザ・エッジ」を知らない人が不安に思うのは当然です。



● 問題の本質は?

そして、私の予期した通り、トラブルは発生しました。ここらで結論に移りましょう。「クリックインカムの運営母体がどのような会社かは、一般の人に、不幸にしてあまり知られていないこと、このことは問題を複雑にしている周辺要因ではあるが、問題の本質ではないこと」は、はじめの方で述べました。では、本質はどこにあるのでしょうか?


問題の本質は、以下の読者からの次の意見に集約されるでしょう。

    インターネットはみんなが運営者であり、利用者のはずです。ですから、お互いを無視した行動は、ネットそのもののモラルに反すべきもので、ネットを利用する資格はないと思われます。こういうことをすると、やがては自分の首を絞めることになりかねないのを何故わからないのか、全くの疑問です。(ある男性の意見)

問題の本質は、クリックインカムの運営母体にしても、一部の問題を起こしているメルマガ発行者にしても、インターネットの基本的枠組み・コミュニティーとしての視点をわきまえていなかったこと、読者への視点が決定的に欠如していることであると思われます。


そのために、読者に一切、お伺いを立てずに、周知期間を置くことなく、購読者アドレス移行してしまうメルマガが出てきてしまったのだと思います。メールアドレスそのものは、単なる物でも、その背後にはそのメールアドレスでネットというコミュニティーに参加している購読者がいるのに、その存在を完全に無視してしまった。自分の分身のようなメールアドレスの行き先である運営母体の説明もなく、です。このことが、トラブルの究極的原因であると思われます。ある女性の方はこのようなメッセージを寄せてくれています。


    新しいシステムが出てくる時は初期において何らかのトラブルが 発生する事は予測できるが今回はシステム上の問題と言うよりは 人間としての良心やモラル・気遣い・ケジメ等の問題のように思 える。 読者の顔が見えないからと言って軽んじるのは許されざる行為だ と思う。(ある女性からのメッセージ)


● まぐまぐ成功の要因に学ぶ

クリックインカムの運営母体である「オン・ザ・エッジ」がかなり実績のある会社(日経マルチメディア主催のECグランプリでも部門賞を受賞しています)でありながらが、あまり一般の人に知られていないことが問題の根底にはありますが、それが本質ではなく、そこから派生する読者の不安について、余りにも関係者が無知すぎたことが原因だと思います。まぐまぐだって、最初は無名でした。だから、最初はトラブルが発生したこともあります。でも、まぐまぐはいつも読者への視点を忘れていなかったために、支持を集め、今の地位を築いていきました。たしかにお金もうけをしているからこそ、株式会社にもなれたのですが、常に読者への視点を忘れることなく、メールマガジンひいてはインターネットの日本での定着に寄与してきました。現在、問題になっている読者アドレスの発行者への公開を今まで維持してきたことだって、元々は読者への便宜を図るため、具体的には、まぐまぐのサーバーの調子が悪い時に、別のシステムを使ってでも最新情報を読者に送れるようにとか、新しく購読者になった人にバックナンバーを送れるようにとかいうこともありました。


あまり名前を知られていないが故に、さまざまな誤解をされることは確かに嬉しいことではないし、「メールアドレスをあたかも不正利用しているかのように思われる」のは不愉快極まりないことだと思いますが、ビジネスの世界は信用を築いていくことが一番の課題であって、それは「オン・ザ・エッジ」さんもあれだけ実績のある会社ですから充分、ご存知だと思います。当然、予期される問題に対処すべく、周知期間の徹底などをメルマガ発行者に最初から促すべきでした。(1月31日付で、クリックインカム運営者はメルマガ発行者に周知期間をちゃんと置くように指導しています。)


その点、先述の「MSNジャーナル」にしても「Field Gate Internet Now!」にしても、さすがと言うべきでしょうか、ちゃんと周知期間を置いて移行しています。解除したい人は、移行前に解除できるようにしています。これもトラブルを少なくした、大きな要因でしょう。



● スパム・センシティブたれ!

メールアドレスは、想像以上にプライベートなものです。たかだか20文字程度の数字やアルファベットの羅列の背後に、生きている人間がいるからです。また、メールソフトの受信トレイは非常にプライベートな感覚があります。そこにスパムメールや本来は頼んでもいないメールが来ると、自分の家に土足で入られたとような嫌な思いをします。その故に、メールマガジンの配送システムを変えることは、「クロネコヤマトからカンガルー便に変えること」とは本質的に違ってきます。後者では、せいぜい玄関先までにしか配達員も入ってきませんが、メールマガジンの配送システムを変えることは、自分の家の中に入ってくる人が変わることを意味します。見知らぬ人や、ルールをわきまえない人を、玄関先で相手にするのならまだしも、そういう人が家の中まで土足で入ってきたら、嫌な思いをします、


そういうプライベートな感覚をEmailは持っているのに、今回、問題を起こしている人たちは、そういう問題に対して余りにも無知でした。要するに、広告主のみに目がいってしまって、読者をなおざりにしてしまったことが今回の問題の核心だと思います。


インターネット人口の拡大と共に、インターネットが持つビジネスとしての可能性も飛躍的に増大していく中、私たちは、日に日に多くのスパムメールに悩まされています。スパムメールのカテゴリーには勧誘メールだけでなく、ネットの掟を守らないメールも含まれるべきです。これからは、よりスパム・センシティブになっていかないと、ネットというコミュニティーから総スカンクを食っていくことになり、結局、そのようなスパムメールの目的(お金儲け)も達成されないでしょう。実際、今回の事例に見られるようなトラブルにあった方の中には、「絶対にクリックしてやるか」と思う人も少なくないですから。人間、気分が重要ですから。



今回のアンケート結果を機に、メルマガ発行者と読者の関係がより円滑になり、相互に信頼のおける関係になっていくことを期待してやみません。


My Internet Lifeのホームページに戻る

読者の立場の方々へのお願い




ISDNの申込みなら当社へ。代行手数料無料。デジタルカメラが抽選で当る

快適インターネットのための確かな約束